隣町にある福島県立田島高等学校(以下、田島高校)でアルティメットを教えて6年目になる。きっかけは体育の先生からのお誘いだった。10年くらい前から手帳に「田島高校でアルティメットを教える」と書いてきたことが実現したのでとても嬉しかった。
体育の授業は評価を伴う。それは僕には出来ない。僕にできることは、ただ一つ。「楽しんでもらうこと」。どう楽しんでもらうかに注力し、技術的なことやルール的なことは最小限にとどめている。
それは一方で褒められたものでは無いことも承知している。学校体育は甘いものではない。しかし、高校生になっても、投げ方はなってないだとかルールを覚えてこいなどと言われるのは忍びないと思っている。だから授業中は褒めまくっている。
実際に、田舎の高校にはドロップアウトやバーンアウトした生徒がたくさんいる。理由は知らないけれども、彼らには素晴らしい才能があったことも事実だ。想像の域を出ないが、その才能を評価してもらえずに(もしくは発揮させてもらえずに)日々過ごしていたのでは無いだろうか。
アルティメットは点を取る競技である。それは誰もが認めるところであろう。しかし点を取ることにフォーカスした指導はほとんどない。机上の理論だけれども、パスが多ければ多いほどミスをする確率は上がるのだ。
ディスクを真っ直ぐ投げることは容易ではない。曲がるからだ。ならば、曲げて投げたらいい。体の向きを変え、曲がった先に相手がいればいいのだから。パスが通ればナイスパスだ。
ディスクが地面に落ちたら攻守交代なのだから、ディスクが地面に落ちないようにた高く投げればいい。走って取れるかもしれないから。パスが通ればナイスキャッチだ。
少しだけ想像力を働かせて、少しだけ勇気を持って、これまでの当たり前の考えをやめてみる。そういうことを彼らに伝えたいと思った。結局、この競技はどういうことなのだ?どうしたらいいのだと感じ、考え、行動できるように。
しばらくすると、素晴らしいプレーが生まれてきた。びっくりするようなプレーができてきた。想像力を働かせた、勇気を持ったプレーがそこに生まれたのだった。
さらには話し合い、自分たちで作戦を考える生徒たちも出てきた。ゾーンディフェンスやワンツーパスなどを駆使するようになり、こちらが多少本気でやらないと太刀打ちできないレベルにまで成長した。嬉しかった。
初めての生徒からU20の代表選手が誕生した。地元に残って今でも競技を続けてくれている。今では僕の右腕よりずっと太くなって、中心選手にまでなった。僕の誇りである。
そして今年も超有力な選手が生まれようとしている。
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